ツキノワグマのことあれこれ
このページは過去に聞いた話や見たこと経験したことを元に書かれています。
足もとからクマが!(当然ですが熊猟が禁止されていない頃の話です)
 一昔前までは冬期の楽しみでイノシシ猟をする人が多かった。その猟中の出来事です。N氏は休日、猟仲間数人と繁山谷にイノシシ猟に入ったのだそうだ。
 猟犬たちの吠える様子に獲物の気配を感じ、一緒にいたY氏とふた手に別れて登りはじめた。N氏の登りはじめた所にはケヤキの切り株があり、そのあたりで猟犬は吠えている。N氏は最初ウサギでも見付けたのかと思い、見晴らしのいい空洞になっている切り株に上側から上がったのだそうだ。下では猟犬がさかんに吠えている。
 その時突然時突然穴奥からクマが
赤い口を開けて威嚇しながらはい上がってきたのだそうだ!上向きに持っていた猟銃を下に向け発砲したという。立っていた穴から口を開けてクマが出てくれば誰でもびっくりするだろう。 連れ立っていたY氏はその様子を離れたところから見ていたそうだ。 よくもそのような状況で撃てたものだと感心する。
 仲間が集まり穴に落ち込んだクマを引き出したが、まだイヌは根もとにある隙間に吠えている。よく見ると二頭の子熊がいるらしくそれを吠えていたのだ。二頭の子熊は猟仲間の一人が育てると連れ帰り牛乳などを与えたそうだが、まもなく二頭とも死んだと言う。
 Y氏は今でもあるそのケヤキの切り株を時々クマが冬眠していないか訪れるが、それ以来入って冬眠している気配はないと言う。


N34°25’34.21” E131°48’12.21”にあるケヤキノ切り株

切り株は直径は1.3mほど、穴の直径は約70センチ
 Y氏の言う「まだある」と言うケヤキの切り株を探してみた。下からの高さは2mほどだが上側からは40pほどの高さで切り株に上がることが出来る。造林地の杉は大きくなり、当時とは変わっているかも知れないがこの切り株に間違いない。雨は直接入ってくるが、雪は積もると穴はふさがるのかも知れない。この穴で冬眠し、2頭の子を出産し育てていたのだ。

突然クマに襲われた話
 福川地区にある三害水という場所にある集落共有の造林地で枝打作業中、婦人が倒れた杉の木の下をのぞいたところ、突然ツキノワグマが飛び出してきた。クマは婦人に抱きつくように襲いかかり、婦人はクマと一緒に斜面を転がり落ちたと言う。斜面を転がり落ちたことでクマは逃げていったが、婦人は背中に爪で掻かれケガを負った。その後、しばらくの間通院を余儀なくされたと言う。
 まだ雪のある頃で倒木の下で冬眠していたと思われる。その後、雪に残る足跡を追跡されそのクマは猟師に射殺された。クマの足の裏はやけどのように赤く腫れていたそうで、凍傷になっていたのではないかと言っていた。

すばらしい野生の能力に感嘆!
 その日私たち夫婦は某市に買い物に出かける途中だった。国道一八七号線を隣町に入ってしばらく走った時、突然道路をクマが前方から走ってくる。片方は川で崖、反対側は岩盤を切り取った急斜面で他へ逃げることも出来ずに道路を走っていたのだろう。何台かの車はそのまま通り過ぎたのだが、気になりUターンして引き返してみた。
 岩盤を切り取り、モルタルを吹き付けその上に落石を防ぐために金網が張ってある場所で黒いモノが落ちるのが見えた!なんと金網の下側の隙間から入り込んで登りはじめたが、モルタルを吹き付けた急斜面を爪で支えきれずに10mほどの高さから転落した所だった。クマはまた金網の裏を登っていく。今度は途中草や木の生えた所を選んで登っていく。
 

ネット裏を登るクマ

さらに登っていく、中央の黒いのがクマ
 落石防護ネットは上の方に行くと、斜面から転がってくる落石を受けるように離れ垂直になっている。背中を押すようにあった金網もモルタルを吹き付けた斜面との間隔が開き、草や木も無くなる。どうするのかと見ていると今度は金網を登りはじめた。「やめろ!落ちるぞ」と思いながら見ていると、クマはほぼ垂直につり下がっている金網を長さは上部まで登り切った。道路からの高さは25m程度あるだろう。
今度は網を斜面から離すために使われている幅10p長さ2.5m?ほどのH鋼の上をわけもなく歩いて山に到達、そのままヤブの中に消えた。なんとすばらしい野生の能力なのだろうかと思わず拍手をした。


現場
国道187号線 集議谷付近のクマが落石防護ネットの裏を登った所、一番高いところを登った。(後日の現場です)
小クマたちの奇妙な行動
 2012年秋、津和野から帰る途中遠回りになる旧道を帰っていたときのこと。 町境の峠を下りる途中にある本郷共有林の杉の造林地の中を帰宅中のこと。つづら折れのカーブを回ると丁度道路を横断しようとしている親子クマと遭遇。
 小熊は道路上に2頭、親クマ(雌)は道路脇の笹の中から首から上を出していた。車の接近に気付き親子のクマは笹藪の中に引き返した。ところが小熊は2匹とも突然に近くの杉の木に登りはじめた。「いいチャンス」と思いすぐにカメラを取り出そうとしたが間に合わず、撮影することは出来なかった。
 親クマはゆっくりと、おそらく来たであろうヤブノ中をゆっくりと離れていく。木に登った小熊も3m程登り少し方向を変えるようにスルスルと降り親熊の後を追っているようだった。小さな谷を越え、見え隠れしながらヤブノ中に消えていった。
 小熊達はなぜ2頭とも同じように木に登ったのか不思議だ!それはまるで視界の利かない笹藪の中、木に登りあたりの地形を確認するためだったのかも知れない。
 

親小熊と出会った場所(後日撮影)

見え隠れしながらゆっくり去るクマの姿
(小熊の大きさはよくわからないが30p以上の杉の木に難なく登った事から、我が家の愛犬ていど、体重15kgほどはあったのではないかと思っている。)
 
何処にいても不思議じゃない!
 8月の暑い日の夜8:00頃の事、夕食を終え庭に夕涼みに出た時のこと、集落道に軽トラックが異様にゆっくりと入ってきた。100mほど入ったところでUターンして出て行った。誰かな?どうしたのだろう?と考えていると、足音を感じた!。それは急に反転して引き返すときズズッど地面を滑る音だと思った。おかしいな?と思いながらも家内かも知れないと「オイ!」と声を掛けたが返事がない。すぐに懐中電灯を持ち出し照らしてみたが何もわからなかった。100mほど離れた隣家のイヌがやたら吠えていた。
 次の日、防災無線の放送で「・・橋付近で昨夜8時頃クマを見かけました。危険ですので注意してください」の放送!
 推定すると道路にいたクマを軽トラックの運転手が発見、橋を渡ったので追尾して入ってきたが、クマを見失ったので引き返した。
 おそらくクマは橋を渡るとすぐに我が家の敷地内に入ってきた。回りは田んぼなので家の後ろを回り前庭に来たところ、夕涼み中の私を発見しびっくりして反転して逃げたのだろう。
 我が家は川端で回りはほぼ田んぼの中の一軒家、山とは少し離れているがそんなことは関係ないようだ。以前にも敷地内の柿の木にクマの爪痕があったことがある。少なくとも近年に2度は我が家の庭をクマが駆け抜けた事になる。

 

冬眠前の身干し?
 季節としては12月の小春日和の午後だったと思う。残土場で仕事中の事、葉を落とした広葉樹林の尾根に黒いモノが見える。谷や道路田んぼを挟んだ対岸の尾根で距離は300m以上だろうか?時おり動くような気もするがはっきりとはわからない。近くにいたN氏も「クマじゃないのか!」と見ていた。
 とうとう測量用のレベルを取り出して見た!、やはりクマだ!尾根に生えている傾いた樹木、その木に腹ばいになり前足と後ろ足を下に垂らし居眠りでもしているようだ。時折手足をゆっくり動かすが、又動きが止まる。 気がついてから数時間はそこに居た。

 
クマは冬眠する前に身干し(ミボシ)をすると聞いたことがあるがそれだったのかも知れない。

林道散策中遭遇
 四季折々の山野草や動物たちに遇える林道散策は好きで、よくあちこちの林道に車で入ります。ある秋、木部谷地区の保安林管理道をゆっくりと車を走らせていると前方に道路下から一匹の子グマがはい上がってきた。すぐに車を停止、エンジンをも切って見ていると、子グマは出てきたところへ引き返した。今度は親クマと一緒に出てくるのではないかと、しばらく待っていたがその後現れることはなかった。

枝の折り方 
 クマが栗園などで枝を折る方法!まず折ろうと思う所の上側を歯(牙)で切れ込みを入れる。6pほどの枝なら1/3程度、小さな枝では半分ほどにも達する。あとは前足で軽く押さえるだけで簡単に折ることが出来る。
 
クマが栗の枝を折るのはすべてこのような折り方、親から教わるのか、生まれながらに備わった能力なのだろうか?

クマ棚
 クマの被害で放棄された栗園。枝を折っては尻の下に敷いて棚を作り、その上で栗を食べると言う。

捕獲檻

 設置されたドラム缶式の捕獲檻。クマはそこに餌が無くなるまでは狙ってくる習性がある。放っておくと被害は拡大するためドラム鑑式の檻で捕獲される。中には蜂蜜が置かれ、入ると蓋が落ちる仕掛け。
 捕獲されたクマは農林事務所の人が、トウガラシスプレーなどで人間の怖さを学習させ遠くの山奥へ放獣するという。
「奥山放獣」である。また遠くで捕獲されたクマはこちらの近くの奥山に放獣される。
 中には100km以上離れた場所で捕獲されたタグを付けたものも捕獲されるという。
 タグを付けたクマなど、再捕獲されたものは学習能力がない?とかで射殺が許可されるようだ。


ある目撃
 家内と連れだってハイキング中の事、弁当を食べながらふと前方を見ると何か黒いモノが見え隠れする。最初はカラスかな?と思っていたが現れたのはクマ!100mほで先の木の上で何かを食べているようだ! ツル状の植物の実を食べているようです。
 サルナシの実、エビヅルの実あたりではないかと思います。このような森は野生動物には必要なのですね。 
足跡
 管理不足の我が家の畑です。石灰を散布しトラクターで耕し、タマネギ苗を植え付ける前の下ごしらえをした畑です。
 落ち葉が交互に並んでいます。よく見るとクマがあるいた足跡に風で飛ばされた落ち葉が集まっているようです。左から右の方へ、やや前足跡は内側向きに付いています。
左右に頭を振りながら食べ物を捜し歩く姿が想像できます(^_^;)


ミイラ
 古い我が家の母屋だった建物、倉庫代わりに使っていたが建て替えのため解体していたところ、天井板を落とすとその上にあったものです。
 クマの右前足のようです。そんなに大きなクマではないようですが、いったい何のためにあったのでしょう?
考えられるのは
@強さの象徴であるクマ、「魔よけ」の意味で天井裏に置かれた!
A強いクマの臭いはネズミ除けになったのかも知れない。
B近くでクマを解体した猟師達が遺棄したものを猫が持ち帰った。


いずれにしても丈夫な骨と鋭い爪は相当な力がありそうです。(保管中です(^_^;))

蜂蜜を狙う
 このサイトの他のページでも掲載した画像、樹種はミズメ(サロンパスの香りのする木)でもちろん生の木です。内部の空洞に小さなヒビ状の穴からニホンミツバチが出入りし巣を作っています。
 この蜂蜜を狙ってクマが穴をあけている途中です。まだ穴は小さいようです。クマは人の気配で中断したのかもしれません。クマの性格上あきらめませんもっと穴を大きくして、手を入れて蜜を採ることでしょう。
 他の場所で、シデの木に直径14pほどの穴を開けたのも見たことがあります。登山道ぞいでもあり最初は人間がチエンソーで開けたのかと思ってました。
クマはイイ仕事します(^_^;)

鈴ノ大谷にあるクマ穴と言われている岩穴

この空洞も快適な冬眠が出来そうです
←発信機
 一昔前まで捕獲したクマに付けられ放獣していた首輪式発信器で、この周波数は146.131Mhz。 調べてみると2001年9月29日に錦町で捕獲され、放獣された個体。この首輪は吉賀町の深谷付近で発見したもので、この信号は6Km 以上離れた羅漢山でも受信できていた。
 ネジで留めてある部分にはクマの毛が付着している。これは個人的な趣味で時々追跡していたが、或る場所から移動しなくなったので電波を頼りに探しだしたものです。指向性のあるアンテナ、減衰器 等は自作の装置です。あたりに骨などは見あたらず、脱落した原因は不明。
 左の丸い容器は高性能な電池、電池の横にエポキシ系接着剤で固めた小さな発信機部分、右の棒状なのがアンテナで一部首輪の中を通り発信器につながっている。送信機は1秒間隔でパルス性の電波を出し電池の消耗を少なくしているが、電波には個体識別する信号などは含まれていない。この装置で10年以上経過しても機能を果たしていた。その約一年後、電池の消耗で停波した。

 

クマにも相性がある!

 何処に行っても受信機を携帯し調べていた頃の話。阿東町徳佐に2004年10月に捕獲放獣された個体がいた。このクマの発信器の周波数は146.554Mhz で行動半径は少なくあまり移動しない。時折、野道山の尾根を越て柚木に行く程度だった。性格から雌ではないかと考えられる。
 もう一頭の個体は同じく阿東町で捕獲されたオスで147.095Mhzの発信器を付け、捕獲時の体重45kgの記録がある。これは一ヶ月に一度の割合で柿木村椛谷付近に現れる。この個体は行動半径が広く、津和野町名賀でも信号を受信したことがある。おそらく阿東町一帯を縄張りに周回しているのだろう。
 ある時、買い物で訪れた徳佐でその二匹の距離が約500mほどに接近しているのを信号で確認。繁殖行動の時期でもあり、これは期待できる!と次の日仕事を終え駆けつけてみると、どちらの信号も聞こえてこない。どうしたのかと思いながら柚木経由で帰る途中、柚木で146.554Mhz の信号が聞こえてくる。

 
二頭は出会ったはずだが、一頭は所在不明、もう一頭は尾根を越え移動していることから相手を受け入れられずに離れていったと考えられる。このことからやはりクマにも相性があるのだな!と思った。
 
その後オスクマの信号は確認できなくなった。徳佐から離れない146.554のクマは相変わらず、高岳山と野道山あたりに居たが、2012年に珍しく阿東町徳佐下で信号を聞いたのを最後にその後聞こえてこない。りんご園にクマが出没したと聞いたので捕獲されたのだろう。

 
現在は電波法等の制限もあり発信器は付けられていないし、信号を確認しているものはない。
クマは魅力のある動物です。
以前、栗の実が出来る頃、クマに逢いに夜な夜なサーチライトを持って、道路沿いの栗園に出かけたものです。

その時はクマの姿は一度も見ることは出来ませんでした。ただ一度だけクマらしい、バキッバキッ!と
枯れ枝を踏み折りながらゆっくりと立ち去る音を聞いただけ
です。
見ようと思っても見られるものではありません。でも偶然に何度か遇えたのは幸運だったと言えるでしょう。

クマは怖い面もありますが、排除する権利などありません。
クマと人間が住みわけられる豊かな環境を取り戻し、いつまでも残したいものです。