錦川源流をたずねる
・・・・・2013年4月4日・・・・・

 
今日の山行の目的は一応カタクリの偵察、暖冬で山野草の開花はすべて2週間ばかり早くなっている。また体力に余裕があれば、弟見山山頂直下にある錦川の源流を見たい。このサイトの趣旨(?)とは異なるが、気になる錦川の源流。時々通る国道187号線、国道沿いを流れる錦川のすばらしい景観、その源流が柿木村で一番高い弟見山のちょうど裏側から始まるからだ。
 
先ずは弟見山山頂を目指す。ルートは柿木山口線(県道123号線)の島根県と山口県の県境でもある仏峠から、県境の尾根をたどるコースを歩く。本日毎度の単独行動、09:06仏峠を出発。

赤い線が今回たどったルート
仏峠からの登山道、左は島根県、右は山口県で県境の尾根、明るい尾根の登山道は快適。 下界では花の時期は終わりだが、ここではこんな感じ。
登山道上にある穴。「もう春ですよ!お目覚めですか?」 決して手は入れないでください。 あちこちにあるイワカガミの蕾はまだ小さい。
左上画
登り始めて52分、ここは三つの河川の分水嶺になる場所。つまり、登山道の左は島根県側で高津川に流れる。右側上方は岩国市で瀬戸内海に流れ込む錦川、右手前は防府市を流れ周防灘に流れ込む佐波川の各流域になる。かなり以前ここに「三国境」とプレートがあったことがある。古い言い方をすれば石見国(いわみのくに)長門国(ながとのくに)周防国(すおうのくに)の境界でもあった。この地に名前があるかは不明だが三国境はぴったりだろう。

また、西中国産地(桑原良敏氏)によるとこの地が「兄見山」だと言う。(弟見山・兄見山の伝説は、猟に出た兄弟が離ればなれになり、兄は弟見山から兄を捜し、弟は兄見山から兄を捜したという伝説)西中国山地204ページの莇ヶ岳と弟見山で指摘されている通りだろう。

また、ここは現在の周南市の最北端の地でもある。GPSは北緯34度21分22.03秒 東経131度46分15.33秒を表示。

右上画
一度鞍部に降りるが、そのあたりベニドウザンの木が多く、花の時期には美しい光景に出会える。ここからは登山道に沿ってブナの林が続く。ブナの枝には大きくふくらんだ新芽が今にも開かんとしている。
ブナの大木に着生しているヤシャビシャク、ブナの新芽が開くより早く葉を広げ、おそらく花を開いているのだろう。 振り返るとブナの木立越しに野道山から三ケ峰に続く稜線が広がる。
10:35 山頂到着、ここはカタクリの自生地、近年笹を刈り取るグループの努力の結果、以前より広い範囲で美しい花を見ることが出来る。 カタクリは咲いていた。例年なら20日過ぎ頃が見頃なのだが、今年はもう一週間もすれば満開になりそうだ。ショウジョウバカマも花を開き始めている。

山頂の南200mの所にある展望所、莇ヶ岳へ稜線は続く。鹿野町の町並みも山中に見ることが出来る。

10:47錦川源流アタック開始、源流は弟見山山頂と展望所の間にある鞍部、その下にあるはずである。足を踏み込むのをためらう!笹が隙間もないほど密生している。

意を決して笹をかき分け入っていく。足で笹を踏み倒しながら進むが、戻るのを考えると止めたくなる。このような笹の密生した急登を遡るのが、どんなにつらいか何度も経験しているからだ。

何とか「水を見るまでは」と下っていく。笹の下に溝が現れてくるが、水はながれていない。雨の時だけ水が流れるのだろう。

左はGPSの軌跡を地図上に描いたもので展望所側から降り始めた。

やっと水の出る場所に到達、小石の間から澄んだ水が流れ出している。まさに源流と言えるだろう。当然水は飲んでみた、冷たくおいしい水だ。
ほぼ同じ高度で南側に10mの所にも岩盤があり、その上を水が流れているが水量は少ない。

 11:02源流到達GPSは北緯34度07.41秒 東経131度46分36.49秒標高989mを表示している。
 源流の定義について調べたことがあるが、特に見つからなかった。そのためかネット等で調べてみると錦川の源流と称する所は多い。錦川流域に住む者ではないが、間違いなくここが錦川の源流だろう。弟見山三角点から水平距離180m、
登山道からの最短水平距離は約110mの所なのだ。
 
しかし、疑問が一つある。それはここに源流であることを示す標柱など何もないからだ。ここには何か標しが必ずあるものと思っていたからだ。
笹を刈り払い、ここを訪れる小径があれば弟見山の魅力は増すのだろうが、このままそっとしておく方が良いのかも知れない。


錦川の源流、ここから114km以上迂回し、流れ下り岩国市から瀬戸内海に流れ込む。
 
 「行きはよいよい帰りは怖い」、このまま下る方がどんなに楽かと思うがそうも行かない。どこからはい上がるのが一番良いかと上を向くと、覆い被さってくるような笹原、沢を遡るのは無理。岩盤の露出した上方に向かって左側の尾根が良さそうだ。
両手を伸ばし笹をかき分け少しづつ進む。アセビの大木もじゃまをする。雪の多いこの地のアセビは横に広がっている。そのため大きく迂回して登ることになるからだ。山頂から話声が聞こえてくる。「まだ一週間は早いな!」カタクリの開花偵察隊であろう。声ははっきり聞こえてくるのに、なかなか登山道にたどり着けない。
 11:38やっとの事で登山道にはい上がってきた。
とにかくはい上がろうと忘れていた空腹。今朝、急に思いついた行動で弁当も無し、高所で膨張した「どんべえ」が空腹を満たしてくれるだろうか? 帰るのはもったいない、そんな時は昼寝が一番だ。寝ていると野鳥が飛んでくる。羽音ですぐ近くにいることを感じるが動けない。近くで鳴いていたウグイスかもしれない。

帰りに道路脇で見付けたエイザンスミレ


花の時期以外見向きもされないオオキツネノカミソリ

それから10日後(追加)
 後日(4月14日)、屋敷川林道から再び弟見山を訪ねた。林道沿いにはボタンネコノメソウ、ハルトラノオの群落をはじめ野草を観察しながら歩く林道は快適、山頂のカタクリは満開状態だった。
 訪れた屋敷林道入り口、国道315号線の山口市、周南市境界の峠より約500m周南市側に屋敷川林道入り口はある。
 林道を入ること約1.3km、ここで同じように弟見山近くから流れ出た支流と合流する。左側の谷が本流で、ここは源流から約3km流れ下った所。源流の方にも林道はあるが、山頂を目指すには右側の林道に入る。

この日、弟見山山頂のカタクリは満開、疲れを瞬時に癒やしてくれた。

錦川の源流に関しての記述は個人的な見解です(-_-)