とある農家のある日
2012年11月
これは、時は2012年11月中旬、島根県鹿足郡吉賀町の、とある一軒の農家の記録です。
この家は夫婦二人暮らし、子供達は離れて暮らしていると言う、このあたりではよく見られる家庭。
団塊の世代の夫は退職、妻は現役で勤めている
転作と言う農業政策でわずか60アールほどの稲作、農家とは言い難いが、その中で心だけでも豊かにと暮らす「とある農家」のある数日の記録です。
本人の希望によりプライバシー保護のため(と言うか一人で撮れる?)人物は現れません
 民家の庭は昨夜の嵐で落ちた葉が地面に張り付いていた。落ち葉が嫌で庭には木を植えないという人がいるが、ここの住人は全く気にならないようで、「落ち葉は当たり前のことだ」と言う。

 この日は暖房用の薪を用意するために近くの山へ出かけた。
40年ほど前は畑や栗園、タケノコを採る孟宗竹林だったが、今は放置されている。
 人はこれを荒れていると言うが、彼はそうは考えていないらしい。自然に帰りつつあるのだ、そう理解している変人のようだ。

その中で枯れた栗、松などを暖房用ストーブ、風呂の薪材として利用するのだという。「里山の復活」などと言う大げさな話ではないらしい。
薪材は枯れた栗、松が主、決して良質材とは言えないがもったいない。コナラ、カシなどにはまだ手を付けないのだという。 積載重量は600kg以上だろう。積めるだけが積載重量でなのだ。ここは無法地帯なのだろうか?
_
 突然降り出した雨、山陰の冬型天気は当てにならない。太陽が出ているかと思えば急に曇り雨が降り出す。積み荷もおろせないままサンルームに移動する。
サンルームとはただのビニールハウスの一角、一部をアルミサッシ、ガラスで仕切り5.5m×2.5mのスペースでストーブ(自家製)を備えた場所のことらしい。
サンルームなどという代物ではない。ここは遠慮のないスペースで、工作、家庭大工、電源も使えるのでラジオ、無線機も装備、パソコンも無線RANで快適に動くが、明るすぎてパソコンは使いづらいらしい。
寒い日、ストーブの上で焼く芋は家内のお気に入りだそうだ。
休日などは夫婦で昼食もここですますこともあるというから相当な変人のようだ。
ビーグルのワン子の名前は「チョコ」で七歳だそうだ。
 廃品の太陽熱ヒーターのガラスで仕切った窓越しに見えるのはは家庭菜園。高菜、ニンジン、白菜、大根、春菊、キャベツ、チンゲンサイ、他などが育っている。
 またこの空間は意外にも読書に最適、光が広い範囲から入ってくるためか文字が見やすい。ちなみに今借りているのはグラハムハンコックの「惑星の暗号」という本。面白い!と言う。
 探査機により火星で発見された人面に似た岩、これがかつて火星に繁栄した人類の残した遺物だという。火星に衝突した彗星により壊滅した文明、かつて地球もそれにより恐竜をはじめ殆どの生物が失われたが、それ以上の規模で火星が破戒され、壊滅したのではないかという。
「う〜ん」否定できないし、地球もその洗礼を何時受けても不思議ではない事実云々。「諸行無常」なのだ。日々精一杯有意義に過ごそう。ごもっともである。
 今日は雨が止む様子はない。「晴耕雨読」、付け加えれば「晴耕雨読、時々Net」この日は天候不順で読書、他。

 次の日は昨日の天気が嘘のような晴天、家の廻りを探検してみた。川沿いにある家、その廻りには庭木、果樹(柿)など屋敷林、畑に囲まれた世界!いや、城と言ってやった方が喜ぶかもしれない。
ナメタケは出はじめたばかり、今年初めての収穫予定日。果樹や庭木の下はキノコ類の栽培地なのだ。 椎茸はポツポツ出はじめたところだが少ない。小さな竹はゴサンチクでこのタケノコもおいしい。捨てた古いホダ木にはカブトムシが産卵する。
少し前の画像だがヒラタケ、この時期3度出てくる。多量に出たヒラタケは使用できる状態にして冷凍保存するのだそうだ。 小豆はよく乾燥して保存、孫達の食べる餅のアンやぜんざいに十分な量。あんは粒あん、小豆の形が残り小豆のうまみの判る、甘みの少ないのが好みとか、同感である。でも孫達は?
たくあん用の大根、葉がしおれてきた頃2本を結び竿に掛け干す。住人は古い人間でタクアン(漬け物)無しでは生きていられないようだ。 薪小屋には四列に薪が積まれている。他にも何カ所か積まれている。十分な量だ、退職して十分な暇をもてあましているのだろう。
 「見守り地蔵」と言われ、かつて川で無くなった子供の供養に建てられたと言う。今はこの家を見守ってくれていると信じているようだが、最近詣った形跡は見られなかった(-_-)。 ここにもあった椎茸とその先はミツバチの飼育洞、いくつも見かけたが近年のミツバチの異変で全部いなくなったと言う。ミツバチに戻って来てほしいそうだ。うんミツバチに言ってやろう。
洗濯物の乾燥場にもなっている倉庫の中は小型の農機具。古いながら一応稲作の全作業が出来る農機具を用意している。 こうして見ると貧相だが、本人は気に入って楽しんでいるようだ。畑には冬野菜が茂っているが、出荷するのではないらしい。
 家のすぐそばにある小さな池、直径1mのヒューム管の一部を利用したもののようだが、品がないと言える。
中にはこの夏孫達が捕ってきたエビが泳いでいる。数匹のエビが産卵し増えたのだという。本来はメダカの池だが今はエビに占領された感じだ。たぶん今年の冬もカワセミの漁場になるだろう。
この夏には孫のため庭木にツリーハウスも作られたと聞く。


庭には何処にでもあるような樹木が植わっている。山から引き抜いてきたのだろう。コナラ、アラカシ、ネズミモチ、ウリハダカエデ、ガマズミ、ブナ、エゴノキ、センダン、カマツカ、アオハダ、シロモジその他まるで山ごと持ちかえったようだ。
山歩きが好きで歩けないようになったら、居ながらにして眺めるのだという。冬には野鳥の餌なども置くのだという。 そんなガラかと言いたい。
 
 2012年11月17日(土)天候雨。ビニールハウス内リビングにパソコンを持ち込みこのページを編集中。家内も今日は休み、ストーブの上にはヤカンとサツマイモが置かれている。
先ほど今年採れた小豆でつくられた「ぜんざい」が運ばれてきた。つぶつぶの小豆、中には焼いたヨモギ餅も入っている。
この家では初ものを頂くときには笑う事にしている。爺さんと婆さんが向かい合い、「はっはっはっ〜」、作り笑いをしてぜんざいを頂く。「おいしい!」ちょっと甘すぎるがおいしい(^_^;)。


 「もういくつ寝るとお正月?」孫達の帰ってくる正月が待ち遠しいと言う。完全に爺だ!と感じた。