イノシシ猟

  「シシを捕った」、「シシに畑を荒らされた」など、当地ではイノシシのことを「シシ」と言う。
普通猟期は11月15日から翌年の2月15日までの3ヶ月間なのだが、害獣駆除の名目でイノシシに関してはほぼ1年中猟ができるようだ。積雪のない時期はほとんどがワナによる猟なのだが、積雪期には猟銃による猟が行われる。

 1月25日、積雪は約30センチほど、軽トラックの荷台にイヌを乗せて数台の車が近くの林道に入って行く。
「さてはシシ猟!」と思い無線を傍受する。近年の猟師はアマチュア無線の資格を取得して、アマチュア無線を使用するのだ。
猟犬の首輪には発信機が取りつけられる。猟犬はもちろん資格を持たないので微弱電波の発信機である。これは猟犬が道に迷い帰りが遅いときなど探すのに便利なほか、この発信機には定期的な発信音と、マイクがついていて付近の音を送る仕掛けになっている。ガサガサと猟犬がヤブをかき分け進む音、猟犬の息遣いも無線機を通して聞くことができるのだ。

 場所はちょうど用があり出かけようと思っていた対岸らしい。しばらくすると猟犬の激しく鳴く声が聞こえてくる。どうやら獲物を見つけて追っている様子である。猟師も仲間と連絡し合い、追っているらしい。この積雪の中を追いかけるのは大変なことだろうと想像する。
しばらくすると銃声が聞こえる。どうやらシシを仕留めたようだ。川まで引き下ろし川を渡すらしい、この積雪を林道まで運び上げるよりは楽なのだろう。
しばらくして再度行ってみるとすでに川を渡し内臓を取りだし洗っていた。見たところ40kg前後のシシが一頭、食べるのには手ごろな大きさではないかと思う。

川を渡しすでに内臓を取り出していた40kg?ほどのシシ
トラックまで引っ張って運ぶ猟師
お手柄のワンチャン

小屋に参加者全員集合して解体、分配、慰労会?

小屋の中ではドラム缶で作ったストーブが赤く燃えていた。十分温まりこれから解体されるのだ。シシ猟は冬季の山村の数少ない娯楽でもある。

 このシシ猟、私が子供の頃とは少し違ってきている。昔は車を持っているものも少なく、歩いて集まっていた。そのためせいぜい数地区の猟師が集まっていたようだったが、それでも人数は多かった。
単発の銃を剥き出しで肩にかけ、くすんだ真鍮の薬きょうを弾帯さし、雪輪(ワカン)を長靴につけ、中にはミノに笠を着けているものもいた。よくシシと間違えて撃たれないものだと思った。
近くで獲物が取れると大きな焚き火を囲み解体するのを見に行った。猟師の隙間から焚き火に手を出しながら自慢話などを聞いた。何日も追って取れないときは、ミノを重そうに引いて帰るのだと言う話しには納得できた。

現在は林道もあちこちに出来、4WDの車で簡単に移動することが出来る。猟師の減少と電話、携帯の普及で遠方から駆けつける。猟犬には発信機が付けられ、猟師の連絡も高性能な無線機、携帯電話と進化している。

そのうちの猟犬にはGPS付きの発信機に変わり、ノートパソコンの画面を見ながら車で追跡するようになるのだろうか?、それともワナで生け捕ったシシに発信機が背負わせ、群れごと捕るようになるのだろうか?。

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