ドラム缶炭焼き
 
2012年3月
 30年以上前、養蚕が盛んだった頃、里山に植えられた桑の木、その後放置され高さ10mほどにも成長。
先日、果樹の日陰になるので切り倒した。
桑の木は結構いい炭になるのだ。
6年ほど前、バーベキュー用にドラム缶で炭を焼いたが、その窯で桑の木を焼いてみる。
大きな窯だと炭材を用意するのも大変だが、ドラム缶炭窯は大きさがちょうど良い。簡単に炭焼きを楽しめるのだ。

大きな材は小割りする。長さは後で80センチ弱に切りそろえる。
小割は大変な作業になると予想したが、意外と簡単に割れる。
 右の図は窯の断面図。窯の構造はそれぞれあるが、我が家のはこのようなタイプ。
ドラム缶は横にして使用、下側の奥に7p×10p程度の穴を開け煙を煙突に導く。
煙突は窯の高さで十分。これでも煙の引きが良すぎるときはレンガを置き調節する。

前側は40p×40pに切り取り、その鉄板は炭材を入れた後仕切り板として利用。
この仕切り板を立てないと、空気口からの空気が直接材にあたり炭が灰になってしまう。
 火入れ。小さく切った木を焚き口から入れ温度を上げる。
薪は桑の木の枝などを30p程度に切ったもので生の木。
燃焼室が小さいので風を送るとよく燃えはじめる。
蓋を閉じ、少し風を送ると煙突から煙が出るようになる。
使わなかった窯は湿気を帯び、乾燥すら時間がかかる。
焚き付けに用意した木も、だんだん減っていく。

(-_-)炭でないと利用できないことなら仕方ないが、木の持つエネルギーの多くが熱として失われる気がしてもったいない。暖房なら直接ストーブで燃やす方が、熱を有効に利用できるだろうと考えながら焚く(-_-)、でもやはりバーベキューは炭でないと・・・(^_^;)
 畑の隅の窯からは勢いよく白い煙が上がりはじめる。
煙と言うより水蒸気で、徐々に温度が上がり水分が抜けていく。
 半日ほど焚いただろうか、煙の色は徐々に変わってくる。少し黄みがかった色の煙は木酢を含み、目とのどに強烈な刺激を与える煙になる。
「火がついた!」と言う状態だ。(原子炉なら臨界に達した?)

もう焚き口から薪を入れる必要はない。空気口は最小限に絞るのだが、これが難しい、絞りすぎると消えてしまう。
屋根の裏には透明な水滴に代わって、茶色の水滴がつき始める。
波トタンなどを丸めて斜めに設置、その中に煙を導くと冷やされて木酢が水滴となって回収できるが、今回はその作業はしない。
 火がついてから8時間ほど経過。あたりは暗くなった。
煙の色は薄い黄みから青みを帯びた色に変わった。水分が抜け炭化が進んでいるようだ。
 蓋を少しずらし中をのぞいてみた。回りが暗いせいか真っ赤になった窯の中、金属の仕切り板も真っ赤だ!。
空気穴はかなり絞っているのだが・・・・

備長炭などの白炭(しろすみ)は煙が切れると口を広げ温度を1000度以上に上げ精錬を行う。高温の炭をそのまま窯の外に出して灰をかけ消す。炭の性質が変わり、固く締まり叩くと金属音のする炭になり、火持ちが良くなる。

黒炭(くろすみ)は煙道、空気穴をふさぎ、そのまま温度が下がるのを待つ。炭として利用するとき火着きがよく、最近は黒炭にすることが多い。この場合は黒炭なので炭化が終わると窒息消化する。

 21:00 やっと青い煙が出無くなる。夜間の作業になったが仕方なく、懐中電灯の明かりで赤土を練る。明るい間に用意しておかなかったことを悔やむ。

ショウジと呼ぶ煙道口を赤土を練った大きな団子で塞ぐ
屋根の波トタンから落ちた木酢液で、窯の甲には縞模様が付いている。

窯全体から熱線を感じる。
 焚き口、空気穴も完全に塞ぐ、あちこちにできたひび割れは、刷毛などを使い、どろどろの粘土を塗り完全に塞ぐ。

後は温度が下がるのを待つのみ。(^_^;)

 炭出し(当地での言い方)
窯前面の土を剥がし大きく開ける。土は再利用するので細かく砕き集めておく。
できた炭は一輪車に山盛り一杯、炭は軟らかく、少し叩くと砕けてしまう、とても良質な炭とは言い難い炭だ。

以前桑の木を焼いたときには、もっといい炭だった気がする。そのときはもっと大きな本格的な窯だった。炭材も以前のものは株の部分で材が緻密だったと思う。今回のものは株から大きく成長した部分で、年輪の間隔も広いもので、そのせいもあるのかもしれない。
どちらにしてもできの悪い炭と言える。

白炭と黒炭の違いを比較してみた。

白炭は高温にすることで炭素の構造が変化するのだそうだ。そのため電気抵抗も非常にすくなくなると言うので、簡単にテスターで測定してみた。

炭の電気抵抗は電極との接地面積でも大きく変化するので、一概には言えないが比較することができる。
備長炭(これは脱臭用に買ったもの)では0.25Ωで、ほぼ金属に近い伝導体と言える。
 焼いたばかりの黒炭はどうかとテスト棒を接触させてみる。
なんと、表示は8.57kΩもある。
0.25Ω : 8570Ωと言う比率になる。正しい測定法とは言えないにしてもこれは、良導体と絶縁体と言ってもいいほどの差になる。



それならと思い、今度は電流を実際に流せるかどうかやってみた

バッテリーから黒炭を通して接続してみる。
今回焼いた黒炭では全く点灯しない。

同じように備長炭(白炭)を通して接続すると、直接接続したのと変わりなく点灯する。抵抗が無いことがわかる。
「ただが炭」と思っていたが奥が深いんですね!恐れ入りました。ごめんなさい(-_-)
もう一回挑戦してみたくなりました。今度は里山にはびこった孟宗竹を焼いてみよう。
金属音のする、電気抵抗の少ない御炭様を・・・(^_^;)
追加  白炭を焼いてみる
・・・と言うわけで再度炭焼き(白炭)に挑戦です。
炭化が終わるまでは今までと全く同じです。
黒炭では密閉して消しましたが、白炭は違います。
空気口を開き、真っ赤になるまで待ちます。温度は1000度前後でしょう。精錬と言う作業です。このことで炭の性質が変化します。
 精錬が終わると窯から掻き出すのですが、これが結構困難な作業だ。出し棒と言う先端がカギになった鉄の棒で少しずつ出します。
窯の口まで出すと火箸で集めるのですが、焼けるような熱さです。

ある程度集めては灰をかけて消します。灰と言っても今までに黒炭しか焼いてないので、灰はありません。ちょうどいい具合にビニールハウスの中の畑土、これが乾燥して灰のような状態、これを使います。


うちわがいつの間にか熱さで変形していました。

出し終わり灰をかけ温度が下がるまで待ちます。

待ちきれず電気抵抗を計ってみます。02.9Ωを示します。
炭の性質が変わり精錬された事は間違いないようです。

例によってバッテリーをつないでみます。
ライトは点灯し抵抗値が少ない事を確認。
度の低下後灰の中から少しずつ掘り出します。十分灰のかかってないところは、灰になったところもあり、丁寧に灰をかけなかったのがまずかったようです。
決して良質な白炭とは言えないまでも、堅く締まり白炭であることにまちがいありません。
音もキンキンと言うほどでもなくカンカンです。黒炭はガシャガシャなので少しは音楽的な(美しい)音です。
ドラム缶での白炭焼きは何とかできたようですが、炭出しは熱過ぎます。精錬が終わると今度は密閉すると言う方法も考えられます。
里山にはびこった竹、材料には不自由しないのですが、ドラム缶も鉄板が薄くなるようで、交換が必要なようです。
工夫し、使いようによっては石窯の代用にもなりそうで、また楽しめそうです。

(白炭に使用した材は孟宗竹です)