テンのかしこさ
 今から数十年前と古い話なのですが、テン(イタチ科テン属)の賢さについて体験したことです。

当時、我が家ではニワトリを飼う鶏舎として、庭先に1.2m×2.2m高さ1.6mほどの鶏舎を造り、10羽ほどのニワトリを飼っていました。毎日産む卵は家族で食べるのに十分でした。

 ところがある朝起きてみると鶏舎の中で首から血を流し数羽のニワトリが死んでいます。テンかキツネの仕業だろうと思い、まずどこから進入したか鶏舎の回りを調べてみました。ところが穴を掘った様子もなくどこから進入したか、全くわからないのです。

 数日後の明け方(04:00頃)、ニワトリの鳴き声に気づき、懐中電灯を持ち急いで鶏舎に駆けつけました。ちょうど鶏舎内にいたテンがあわてて頭から扉に向かって飛び込み(実際は前足を頭より前に伸ばしていたのでしょう、扉が大きく跳ね上がるのと同時に飛び出し逃げていきました。なんと、タマゴの取り出し口からテンが飛び出してきたのです
 右の図は当時の鶏舎のイラストです。以前にもキツネが穴を掘りニワトリを襲ったことがあるので、鶏舎の基礎には建築用ブロックで基礎を作りその上にのせています

 後ろ側の三つの扉は産んだ卵を取り出すためのものです。この中央の扉からテンが飛び出してきたのです。

 前回被害に遭ってからは「まさか!」と思い、この扉のフックは必ず掛けていたので不思議に思い調べてみました。
 なんと、フックのあたりに幾筋ものキズがあるのです!。フックを外すために、何度も飛びついて外していたとしか考えられません。フックまでの高さは約1mほどあります。

 テンにはどうしてフックを外さないと開かないことがわかったのか不思議です。でも確かにフックを外して入るのです。

 私はテンはこのような扉は、頭や手で押すことはあっても手前に引くことなど出来るはずがないだろうと思っていました。

 ところがテンはフックを外し、扉を手前に引いて扉を開きそこから進入しているのです。


足がかりになるものもない不安定な個所でその作業をしていたのです。

右のイラストはタマゴを取り出す扉を画いたものです。
 左の画像はフックを掛けた状態の扉を今回再現したものです。このようにしてあり、フックを外さない限り扉は開かない。

 数羽残ったニワトリがいなくなった後、その後は我が家ではニワトリは飼っていません。

 鶏舎だった小屋は金網を取り除き、場所を畑のそばに移動させ、現在では自家用の畑用肥料などを置く倉庫として使用中です。
 それにしてもテンはどうしてフックを外すこと、扉を手前に引くと開くことなどわかったのでしょうか?テンは特に学習能力の高い動物だと言われていますが、まさかこのような能力を持っているとは思ってもいませんでした・・・・・。

 何度もいろんな方法を試してみたと言うより、テンは扉の構造見て理解し、フックの役目までも理解していたとしか思えません。テンの知恵に脱帽です。


 テンに限らず動物は人間が想像する以上に、高い知能を持っているのだと、思い知らされた出来事でした。
kappe