千倉沼散策記

千倉沼は島根県鹿足郡津和野町にあり、中国自然遊歩道でもある。四季折々変化に富み私の好きな場所です。
この沼は北側にある青野火山群に属す千倉岳の噴出物により、堰き止められた堰き止め湖(沼)であり、周辺の沢から流れ出る水は水深約1mほどの水をたたえている。また渇水期には水は沼底へと浸透し中腹へ再び流れ出てくる。人里離れ標高430mほどのこの地は、今言われている生物多様性に富んだ、すばらしい場所でもあるのです。
 (以下の画像は今までに通い、撮影した画像の中から拾いだしたものです。)


直地地区から千倉沼へ行くルートは2カ所ある。今までの徒歩によるルートは、地図上の破線(中国自然遊歩道)と、近年千倉権現維持の為に造られた作業道1.7km(赤線)がある。作業道は自由に通れるが急登で狭く、軽4WD車でないと通れない。崩落石を取り除きながらの前進を覚悟!この作業道規制は無いが個人の責任でのみ通行可能。


作業道を登ればここまでは車で行ける。回転場所を空けておくと数台駐車可能くれぐれも道は良くなく、離合することもままならない作業道です。




3月上旬
残雪の千倉沼は墨絵の世界、水をたたえひっそりと静まりかえっているが、木々は芽をふくらませ、すでに芽吹きの準備をしている。
この時期は落葉した木々を通し、見渡せて広さを感じることが出来る。


梅雨時期の千倉沼、樹木は葉をいっぱいに広げ、湖畔の木々にはモリアオガエルの産卵がはじまる。水中には水生昆虫やカスミサンショウウオの幼体を見ることが出来る。



2012年6月12日
この年は雨が少なく下には水はないが、やがて水がたたえられることを本能で知り産卵が始まる。このあたり全体の蛙の総数は万の数に達するのではないだろうか?
生態系の途中に位置する彼らの運命はきびしいものだろうが、どれくらいが成長できるのだろう。それにしてもこの数は豊かな自然の証しでもある。



水に没したアカメヤナギ(カワヤナギとあるが?)これらが主にモリアオガエルの産卵場所となる。産み付けられた卵は熟し、オタマジャクシとなり、酵素の働きで溶け出した泡の中から水面に落ちるという。





ここは地面へ水の抜ける場所、噴出により崩落した安山岩片は止水性は少なく、雨が少ないと水は全て地面へと吸い込まれていく。


 渇水の時は一面の草原となる。もともと沼から外部に流れ出る川は無い。水はすべて浸透し溢れることはない。一気に降った雨は溜まり少しづつ流れ、自然の防災ダムの役割を果たしている。


近年、間伐材を利用しこのような遊歩道が整備され、沼や湿原を楽に散策、周回することが出来る。野鳥の声を聞きながら歩けば、心身共に癒やされる。


5月下旬、沼の縁や湿原に開花するチョウジソウの大群落は有名、この時期多くの野草ファンが訪れシャッターを押す。



5月下旬、湿原で見つけたマイズルテンナンショウ(舞鶴天南星)、名前の由来がよくわかる。
今、まさに舞い上ろうとしている鶴に見えますね。


のあたりは湿原、手前の野草はショウブ(サトイモ科)、樹木はハンノキ(カバノキ科)。他にも多くの湿原植物を見ることが出来る。



六月中旬、水の中を覗いてみると、卵を背負ったコオイムシが水中を泳いでいた。


同じ頃水中で見付けたカスミサンショウウオの幼体、エラが体の外に出ている。他にも近年新種のサンショウウオも見つかったと聞いた。



3月雪解けの湿原、この頃訪れるハイカーもいる。大自然はまた違った美しさを見せてくれる。カスミサンショウウオはこの頃産卵すると聞いた。春は名のみの 風の寒さや谷のうぐいす 歌は思えど 思わず出てくる一節だ。


9月も終わり頃 廻りのこのような沢から水は流れ込む。テリハアザミも体に似合わない小さな花をつけている。



千倉権現の祭られている祠、毎年例祭は欠かさず行われている。神の住む場所にふさわしい。この岩体に着生していたミズコケは今は見られない。この祠に至る参道にはモミジ、ヤブツバキなども多く自生しそれぞれの季節に楽しめそうだ。
こうして歩き回れることに感謝、これからも健康来られますように・・・・一礼する。


祠の有る小山の麓にある洞窟、何の鉱山かはわからないが、
下には選別した跡?、又は精錬した跡らしき遺構も見られる。石見銀山の一部なのだろうか。石見銀山とは世界遺産となった大森銀山だけではなく、美都の都茂鉱山、津和野の笹ヶ谷鉱山、日原のものなど石見部全体の鉱山の総称だと言う。

以下この地で見られるたその他の山野草木


ミゾシダ 背丈は1m以上でしょうか!。


コバノギボウシ なぜかギボウシはこの種類だけ


6月、ウリノキ
 花びらは開くとめくれ上がる。他の季節には目立たない灌木。


6月、コバノハナイカダ 葉に実を付けている。
8〜9月頃実は黒くなり熟す。


6月、イボタノキ 林縁で花を咲かせていました。


6月初旬、ツチアケビ
 葉緑素を持たない植物です。9月頃ウィンナーソーセージに似た実を付ける


クワイチゴ
 沼畔の桑の木、這い回ったモリアオガエルを想像すると食べる気がしません。


2月、ヤブツバキ 千倉権現に続く道にはヤブツバキが群生、開花は4月始め頃
 未だ、花の盛りの季節に訪れたことはないが、群生する状況から見応えが有りそうだ。


ガクアジサイ
 やけに青が濃い気がします。火山性の土地柄でしょうか?


10月初旬、オオウラジロノキの実
 千倉権現に続く道で拾いました。この木の開花も見たい!、梨の花と似ている筈です。
これまで何度かの散策で見られた山野草、樹木を表示します。画像と重複するものもあります。
チョウジソウ、ショウブ、コバギボウシ、マイズルテンナンショウ、ヒトツバヨモギ、ヒメナベワリソウ、ミヤマカタバミ、テリハアザミ、ノアザミ、ヒルムシロ、ウツボグサ


アカメヤナギ、ハンノキ、ウツギ、コガクウツギ、ガクアジサイ、ウリノキ、コウゾ、ヤマザクラ、アラカシ、アカガシ、ウラジロガシ、シラカシ、ヤブツバキ、イロハモミジ、チドリノキ、ウリハダカエデ、ケヤキ、エノキ、シロダモ、ハナイカダ、オオウラジロノキ、リョウブ、コシアブラ、ヤマイバラ、アオキ、ネズミモチ、ツルアジサイ、ミヤマガンピ、マユミ、イヌガヤ、ゴマキ、ガマズミ、ヤブデマリ まだまだこんなものじゃないでしょう。
勿論ですが、野鳥、猪、熊などにとっても快適な場所である事は、言うまでもありません。先日も生態系の頂点に君臨するクマタカの羽が落ちているのを見付けました。
モリアオガエルが草原のあちこちに死んでいるのを見かけたのは猛禽類の仕業かも知れません。笹が綺麗に刈り取られ、一体誰が刈り取ったのか?と思いながら歩くと近くに刈り取られた笹が山に積まれています。猪の寝床でしょうか?ハエがそこを飛び回り寝息さえ聞こえる気がし、そ〜っと引き返した事もあります。
いつまでも残さなければいけない豊かな生態系が保たれている場所なのです。 

                             
 このサイトでは柿木村地域を主として掲載していますが、隣接地域でもあり例外的に掲載しました。