風力発電失敗記
Jun.25,2014

 子供達の通学用に使っていた自転車、この自転車に付いている発電機を使って、小規模な風力発電をしてみたいと思っていた。

自転車は前輪の軸の中に発電機があるタイプで、歩くほどの低速でもライトが点灯する。これなら低速回転でも発電でき適当ではないかと考えこれを利用することにする。微少電力しか期待できないが、農機具など一度使用するとしばらくの間放置され、自然放電するバッテリーの補充電にでも利用できないかと思う。


使用する発電機は自転車の前輪ハブ軸内に発電機が内蔵されたタイプで、スポークを取り外したもの。
しかし、これがくせ者で低速の発電機かと思っていたが、ギヤを内蔵し回転を増速し発電するらしい。これを回すには意外に抵抗があり、どれほどの風力で回転するのか不安が頭をよぎる。


 この発電機、これは三人の子供の通学用に買った三台の自転車の一台。説明ではほとんど抵抗無しで暗い夜道も安全みたいな話だったが、これほどの抵抗を毎日、3年間でおそらく1万キロ以上の距離を通学したのだ!ほとんどがライトを必要とない昼間の通学なのに・・・・・!
 当初簡単に実験してみた「クロスフロー型風車」の装置。
40p×15pのアルミ板を加工し、それを6枚取り付けてみた。
この装置はアルミ板の取り付け角度、加工する板のカーブを変えることにより「ジャイロミル型風車」にもできる。
これで二つのタイプを試してみたが結果はほぼ同じだった。
かなり強い風でやっと回り出す始末(>_<)
このようなタイプは半分は風のエネルギーを受けるが、片方のいくらかは抵抗として働く事になる。
 発電機無しでは少しの風で回転を始めるが、やはり気になっていた増速ギヤ、発電機の回転抵抗が問題のようだ。
とは言えエネルギーを取り出すには抵抗があるのは当たり前の話!。ようするにこの装置ではその程度のエネルギーしか取り出せないと言うことだろう。

 試しにホースで水をかけるとスムーズに回転を始める。水力に変更しようかと思うがそうもいかない。
 ネット等で見る、小さな装置で発電できるような記事が見られるが少し疑問を感じる。

←プロペラ2号機
 調べてみるとプロペラ型が能率が良いと言うことで、プロペラを削り出し作ってみた。材質は桐でナタ、電気カンナなどで成形するが、これが結構難しい。左右対称で無くてはならない。単に重量的にバランスがとれているだけではいけないはず、回転するとモーメントに差が出ては震動を始めるだろう。
 また、プロペラの形状も推進力を得るのではなく、風により回転力を得るようにする必要がある。頭の中ではわかっていても、いざ削り出すと飛行機のプロペラのようなひねりになっている。最初はこれで失敗、これは2作目!

 仕上げたプロペラの長さ(幅)は全長120p、全て独断と偏見により決めた値で削りだしたものだ。

 
発電機とプロペラの取り付けは木ねじで取り付ける。どこかのTV番組の台詞ではないが、「やってみなければわからない」と言うことで地上高2mのパイプの上にセットする。
 「回ら〜ん」、そよ風程度では動く気配もない!
中学校で習った「最大摩擦力」なる言葉が頭をよぎる。物体を動かすとき、動き始める寸前が一番抵抗が大きい。これが最大摩擦力だと言う話を思い出す。

 風が強くなったとき、手で少し回転を与える!回り続けるかと思いきやすぐに停止する。風力と簡単に言うがいかに密度の薄いエネルギーかと思い知る。

 最初削った失敗作のプロペラをビスで取り付け4枚羽根にしてみる。少しはマシだが形も違うし、あまりに不細工で見るに堪えなくすぐに取り外す。

 

プロペラ2号機改
 最後の手段!プロペラの端に25pの長さを追加する。薄くなったプロペラの先端部に穴を開け竹ひごを差し込む、強度を期待できる。追加分にも穴を開けたっぷりの接着剤で取り付ける。強度に問題はあるが効果は期待できる。
接着剤の硬化後成型。
左の画像は全幅170pになったプロペラ!
期待できる!

 天候の悪化で強風が吹き始めた!回る!やはり先端に追加した分、モーメントも大きくなるはず、その効果なのだろう。

 2014年6月3日
風は強くなり、たぶん強風注意報が出ていたと思う。一時的には継ぎ足した部分が吹っ飛ぶのではないかと思う程の高回転になる。
その時の電圧を測ってみた!無負荷の状態でテスターの値は26.7ボルトを示す。

 それは一瞬と言ってもいいほど不安定だ!しかし、この電圧は意外だ!

 自転車のライトの中を開いてみると、電球は7.2ボル0.55Aとある。他に電子回路の基板が入っている。おそらくは電圧を安定化するための回路なのだろう。

 想像以上の電圧に何とか実用化したいと言う気持ちが強くなる。
 簡単に充電実験をしてみる。コードは発電機につながっている。
整流は手持ちのブリッジ回路に組まれた全波整流器、これで直流に変換され6Vのバッテリーにつながる。(平均した高電圧は期待できないので6Vのバッテリーを使用)
途中の電球は高電流が流れないように保護回路の役目、実にいい加減な回路だ!

これでいくらかは充電できるはず、しばらく放置してみる。

 強風で高速回転時に薄く電球が点灯する。充電電流が流れている証拠、イイ感じだ!
 一昼夜まではいかない、ほぼ15時間程度経過、その間不安定ではあるが強風に恵まれた!完全に放電しきっていたバッテリーにいくらかは充電できたようだ!
以前、非常用に作っておいた照明はスイッチON で明るく点灯した。

ここで一つ問題点が発覚。
 発電機からのケーブルは、風向きの変化に対応得できるようにと、十分余裕を持たせたが、見るとケーブルが支柱にしっかりと巻き付きそれ以上回転しないほどだった。
風向は変化しても、左右回転で相殺されそれほど巻き付くとは思わなかったが、地形にもよるのだろうがこれは意外だった。
この対策は自作するには少し面倒なことになる。
 この点では最初に実験した「クロスフロー型風車」や「ジャイロミル型風車」などの垂直型がいいだろう。

プロペラ3号機(右)
 

 色々考えてみたがプロペラの魅力は捨てきれない。直径の大きなものを作れば回転トルクも大きくなり回転するはず・・・・!、と材料を探したが見つからない。やっと探し出したのがヒノキの間伐材を薪用にと持ち帰っていたもの。
 右のプロペラが3号機、直径195pで丸太から削りだしたもの。加工の容易な桐材は無くなり、ヒノキの丸太から作ったプロペラ、桐に比べてかなり重たいが、強度はあるだろう。
 プロペラ2号機を設置してからは強風も無く、動く気配もない。170pも195pもそれほどの違いは無いようだ。
左のプロペラ2号機改は発電機の増速ギヤが壊れ、回転抵抗の少ないものに取り付けているが、これはそよ風程度でも実に良く回る。

エンドレスの電力取り出し装置
 3号機プロペラに取り付けたブラシ、これは全方向の風向きに対応出来るように試作したもの。ブラシは銅製で弾力が無く問題があるが、弾性のある材質でないとすぐに接点不良を起こしかねない。
 水道ホース用のMCユニオンは防水のためのカバー。

 その後強風に恵まれず3号機は回転すらしない!

 後日(数ヶ月後)、これが最後と削りだしたプロペラ。直径は3m、ホウノキの丸太から削りだしたもの。
下にあるのは1.95mのもので大きさを比較したものです。
 結果は良好。さすがにパワーがあるらしく、下の物とは比較にならないほど少ない風で回転をはじめます。

 しかし、やはりと言うか回転数が上がらない。回転数が少ないと言うことは発電電圧が低いと言うこと!これはプロペラのひねり角を大きくしたのが、回転数が上がらない原因かも知れない。これは少しでもトルクを大きくしたいと思い大きくしたもので、その効果もあるのかそよ風でもゆっくり 回る。

 ただが自転車の発電機を回すために、これほどの
ものが要るのだろうかと考える。
 これだけの大きさになると強風時には、相当なパワーが出るだろうし危険でもある。安全確保にブレーキも必要になる。変化の多い風のエネルギーを利用するのが如何に難しいか思い知る。
←さらに後日
 そよ風でも回転しはじめたプロペラ!何とか充電できるようにと制作した倍電圧全波整流器。これは電気温水器の制御基盤から取り出した部品で自作したもので、うまく動作する。この値なら12V のバッテリーにも充電可能だろう。

 テスターの値は風が少し強くなり、負荷は無くテスターのみを接続した値です。そよ風程度では8V 前後の電圧が出るようです。そもそも6V程度の発電機なのでこんなものかと思います。
ついでにこんなこともやってみました。
 ついでに水力の可能性についての予備実験です。
発電機は自転車の発電機で、タイヤに接触させて発電するタイプです。

これにファンをつけました。これは古い電子レンジの冷却用のファンです。これを発電機に取り付けたものです。
これにノズルからの水を吹き付ければ高速で回転するはずです。
これなら簡単にできそうです。

ノズルの水をかけます。
谷川から引いた水道です。圧力は0.19MPa前後だと思います。
テスターでの計測した電圧は6V程でした。
もう少し電圧が高いかと思ったのですが、意外と低い電圧でした。
結構高速で回転しているようなのですが・・・・、
毎分2000回転以上あるみたいなのですが・・・!
ライトの点灯は発電機からの出力です。バッテリーは使用していません。

谷川から引いた水は池に常時出しています。これをノズルから出せば常時発電が可能かも知れなせん。電圧は6Vと低いので倍電圧整流回路が必要かも知れません。それにしても、もう少し電圧を上げないと12Vのバッテリーに充電できないでしょう。

それにしてもファンにカバーをしないと飛び散った水で水浸しです。
終わりに・・
 失敗記とはいえ貴重なデータとは言い難いが、得られたものも多かったと思っています。
 一番感じたことは風力が如何に密度の薄いエネルギーかと言うこと。この程度のもので強風時やっと数ワットの電力が得られる程度です。
それに比べて私たちは日常生活で如何に大きなエネルギーを使っているのでしょう? 石油も石炭等も膨大な時間の間に蓄えられた太陽エネルギー、それを一瞬の間に使っているですね。太陽エネルギーを短時間で変える風力は密度が小さく、低能率の自作の発電にはむいていないのかも知れない。
また、あまりにも勉強不足で始めたものだと思っています。

 とは言えあきらめたわけではない!起動時の抵抗の少ない発電機、または遠心力を利用した接続、回転を始めてから発電機に電流を流し発電するタイプなども良さそうです。  最近の自転車のライトはLEDライトを使用しているので、回転抵抗は少ないかも知れないが、取り出せる電力も少ないだろう。
気長に廃品の中から適当なものを探してみることにします。

 風力の変化は著しい、強風時の安全を確保するためにもブレーキは必要になるだろう。以前台風接近に備えとりあえず止めようと思ったが、これが危険きわまりない。やっとの事で回転を止めプロペラをロープで縛った恐怖体験もある。

 このプロペラはその後耐久性テストと称して、畑の隅にしばらく放置しています。

 この装置で効果が認められたのは、この近くで、モグラ除けの効果と鳥の被害が無かったことです。回転むらによる震動がモグラに、結構大きく不細工なプロペラの回転(2号機改)が鳥にも恐怖感を与えたようです。

終わり
追加!
 先日我が家を訪れた知人、くるくる回るプロペラを見て言った。「私も風力発電機を持っている」と・・・、夕方彼はその風力発電機を持ってきて見せてくれた。市販されている風力発電機で、プロペラは全幅1m程度で3枚羽根、発電機部分は扇風機のモーター部より少し大きい程度。回してみると抵抗は少なくこれならそよ風程度で回るだろうと感じた。

 この発電機の性能は12V〜24Vで400Wのものだという。確かに箱にはそのように記載されている。いくらなんでも400Wの出力は無いだろうと思う。
 そこでこの風力発電機プロペラを取り付け手で回してみた。スムーズに回る。そこでテスターを持ち出し出力電圧を測ってみた。
軽トラックの荷台に置いただけなので風力ではないが、プロペラを手で回してみた。精一杯回転させた状態でテスターの電圧は2.7V程度を表示する。
発電機がどのようなタイプかわからないので、この電圧だけで判断は出来ない。
ポールの上にセットし、かなりの風が吹けば電圧は上昇するかも知れない。しかし、400Wは理解できない。
12Vで400Wと言うと33A(アンペア)の電流が必要になる。その発電機からは確かに太い電線が出ている。乗用車のダイナモが400W程度だと聞いたことがある。エンジンの回転をベルトで駆動し回転するダイナモはそれだけの出力はあるだろう。
しかし、その風力発電機自体の発電電力が400Wはいくらなんでも無理だろうと感じた。おそらくは乗用車程度のバッテリーに充電できる程度だろう。バッテリーに時間をかけて充電し、そのバッテリーを含めたシステムの出力が400W型なら話は理解できる。発電機自体の出力は10W程度ではないかと感じた。(これは私の考えで間違いかも知れない)
 詳しい説明書が見つかれば見せてくれるという。ぜひ見たいと思う。