第3話「ゼウスの雷」
バハムートのMS小隊がトゥラーン基地を襲撃する半月前、サイド2政府議長アークから連邦政府本部に通信が入った。
連邦政府の各サイド政府への介入、そして連邦軍による軍事的圧力、それらを止めない場合は武力での行動に出るという通告であった。
だが政府上層部はこの通告を一笑する。
バハムートが軍備を増強していることはすでに察知していたし、いくらバハムートが戦争を仕掛け来ようとも、連邦軍の物量の前には敵うはずがないという自信があったのだ。
事実、バハムートの全戦力は連邦軍の半分にも満たなかった。
だがこの時、その戦力差を埋める準備をアークがすでに開始していたことを政府も軍も気がついていなかった。
第11特別部隊がアスラード補給基地に帰還してから3日の月日が流れた。
ショウとリリアは基地の司令官から、連邦軍本部から正式な辞令があるまでこの基地で職務につくように言われていた。
その3日の時間の中、ショウはある事でずっと悩み続けていた。
リリアはそんなショウをデートに誘う。
ショウが悩んでいることにリリアは気がついていたが、自分から問うことはせず、ショウから話してくれるのを待っていた。
そんなリリアの優しさを感じたショウは、トゥラーン基地で共に働いていた仲間たちの仇をうちたいこと、ジークと戦って勝ちたいと思っている自分がいること、明日EX-1のオーラセンサーの登録を解除する予定になっていることなどを話す。
だがショウの中で何も答えが出ないまま、EX-1の登録が解除される日がやってきた。
その頃、月の連邦宇宙軍本部から襲撃した大艦隊がサイド2宙域に向かって進軍していた。
ここ数日のバハムートの各連邦軍への襲撃に、バハムートの存在を軽視していた政府や軍本部も、連邦軍の威信のために行動を開始したのだ。
連邦軍の艦隊の接近に何の動きを見せないバハムート。
艦隊司令が不穏な気配を感じ始めた時、どこからか放たれた巨大な光が艦隊を包み込んだ。
それはアークが連邦軍との戦力差を埋めるために、極秘に建造していたコロニーレーザー「ゼウスの雷」から放たれた攻撃だった。
コロニー3基を使い建造された「ゼウスの雷」、それはサイド2宙域からでも地球に直接攻撃ができる史上最大のコロニーレーザーであった。
ゼウスの雷の攻撃によって30隻あった艦の11隻が消滅し、残りの19隻も何らかの損傷を受けていた。
それに追い撃ちをかけ、身を潜めていたバハムートのMS部隊が出現する。
連邦軍もすぐにMS部隊を出撃させたが、艦隊の3分の1が消滅し指揮が混乱した状況では、パイロット同士の連携もとれず連邦軍のMS隊は次々と撃墜されていった。
それから2時間後、アスラード補給基地にも連邦軍艦隊の全滅の報せが届いた。
それと共に第11特別部隊に連邦軍が新たな艦隊を編制するまでの時間をかせぐために、ゼウスの雷に奇襲攻撃を仕掛けるよう指令があった。
連邦軍艦隊が全滅した直後、アークから連邦政府と連邦軍本部に連邦が態度を改めないのなら、ゼウスの雷で地球を直接攻撃するという最後通告があったのだ。
だが新たな艦隊を編制するのには時間がかかるし、サイド2周辺の連邦軍基地はバハムートの先の襲撃でそのほとんどが壊滅しており、すぐにゼウスの雷に攻撃を仕掛けられるのは第11特別部隊だけだったのだ。
過去の連邦を妄執する連邦絶対主義者たちが、連邦軍だけでなく連邦政府の実権を握り、各サイドを連邦の管理下に置こうとしている今の連邦軍の行動に、クルーは反感を感じていた。
バハムートの武装決起も連邦のその動きに反抗したためであり、非は連邦にあるのは明らかであった。
だからといって、今回のバハムートの行いも許されるものでもなかった。
連邦軍とバハムートの行動、そしてクルーの決心、それらを見たショウは悩み続けていた思いに結論を出す。
ゼウスの雷に向かってたった一隻でアスラード補給基地を後にしたネオ・ペガサス、そこにはEX-1の正式なパイロットとなったショウの姿があったのである。