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臆病な男と猫 | |||
暗部に所属するようになって、猫忍をあてがわれた。 連れて来られた猫忍の名は、イルカといった。
気づいているのだ。 「危険だって、思われちゃってるのかねぇ…」 仕方が無いかもね、とカカシは乾いた笑いを漏らした。 一定の距離をおいて、決して近寄ってはこない猫。
「今夜からちょっと長期の任務に出るよ」 飼い始めて半月たった頃、カカシは、いつもの距離をおく猫忍に、呼びかけた。 「一ヵ月後に、戻る」 簡潔にそれだけ告げた。 「んなー」 猫は、さして気にした風でもなく、返事を投げて寄越した。 淡々と。ただ淡々と。
過酷で残忍な任務の合間、 (あの猫がおれと暮らしている理由って、何なんだろうな) と、カカシはふと考えてみた。 猫と一緒に居るときには、まったく思いもしなかった疑問だ。 (だが、あの瞳は己の意思を持っている) 他の猫忍を見た事はないので比べようがないが、彼は、自分で考え行動し、把握する。 (でもおれも、あの猫との生活は、気に入っているしね) できるならこのまま、猫が家を出ようなんて気にならなければいいな、とカカシは思った。
カカシこそが、「おれの傷に触れるな」と、背を怒らせて威嚇していること、その影には、怯える本当の自分がいることに、カカシ本人は気づいていた。 (大したもんだね) このまま、平行線の間柄でいるのも、いいかもしれない。
一ヵ月後、帰宅したカカシを、猫は、意外にも玄関で出迎えた。 「……ただいま」 唖然としているカカシを気に留めるでもなく、猫はカカシの周りをぐるぐるとかぎまわった。 (血臭のせいか…) 浴びた血は、大半が敵のものであったが、わずかに自身の傷から出血したものがあった。
ただ一瞬、苦痛とも、悲しいとも取れる表情を、浮かべて。
そしてすぐに、何事もなかったかのような取り澄ました顔で、傷口を舐め始めた。 カカシは、傷口に触れるざらざらとした舌に、熱さと痛みを感じながら、 |
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end | |||
カカイル小説サイト「God bless you」様主催:「猫忍イルカ企画」 (2005.4/1~5/15)投稿作品。 |
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